極私的松田聖子エピソード集「SQUALL」

オースコールコールコール

どんなアーティストでもそうだけど、デビュー時からのリアルタイムファンにとってファースト・アルバムというのは、「待ちに待った1枚」なのです。

聖子ファンに限って言えば、それまでは「裸足の季節」と「青い珊瑚礁」の2枚のシングルをとっかえひっかえ表にしたり裏にしたりして4曲を聴き続けるしか無かったところへアルバムの登場ですからね。もうイッキに海が広がったというか。

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僕は当時よく通っていたレコード店で予約して買ったんだけど、その店は予約時に注文用紙へ客が必要事項を記入する仕組みになってて、レコード番号なども洩らさず書かねばならず、レジカウンターの横にあった「レコード・マンスリー」でレコード番号を調べて書いてましたね。

友達などはあれを書くのを面倒がってましたが、僕はレコードヲタクなので全く苦にならず、今でもレコード番号を見ればどこのメーカーだかすぐにわかるという、全く役に立たない特技を持ってたりします。

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このアルバムが発売された前年にソニーからウォークマンの1号機「TPS-L2」が発売され友達が購入してたので、それを借りて「SQUALL」をコピーしたカセットを入れて遠足に行ったという、どうでもいい思い出がある。

なので、オープニングの波の音を聴くと、今でもあの遠足がフラッシュバックしてくるのです。

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「SQUALL」は雑誌「GORO」で1980年の歌謡曲アルバム大賞を受賞して(ジューシィ・フルーツ「Drink!」と同数受賞)、聖子さんがトロフィーを受け取った写真が掲載されてたのを見た覚えがある。

そのページは切り取って保存しておいたハズなんだが行方不明。

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このアルバムを初めて聴いた時から「裸足の季節」だけ耳触りが違うよなぁ、と感じていたのだが、その1曲だけレコーディングエンジニアが違う、ということを知ったのは、何十年も後になってからのこと。

裸足の季節」のみ内沼映二さんが担当して、他は全て鈴木智雄さんによるエンジニアリング。

内沼さんは前年の1979年にレコーディング・エンジニア集団の「ミキサーズラボ」を設立したばかり、一方の鈴木さんはソニー信濃町スタジオのチーフエンジニアに就任したばかり、という時期。

鈴木さんは内沼さんが手掛けた「裸足の季節」を聴いて、「こんな素晴らしい声をした子を外部のエンジニアに任せるなんて・・・、オレにやらせてくれ!」と若松さんに直訴して、「青い珊瑚礁」以降エンジニアを担当することになったそうです(名著「ニッポンの編曲家」に掲載されていたインタビューより」。

鈴木さんはベック、ボガート&アピスの「ライブ・イン・ジャパン」やチープ・トリックの「チープ・トリックat武道館」といった、僕が擦り切れるほど聴いた名盤の数々も担当してて、これらの作品と聖子さんの80年代前半の作品が同じエンジニアの手によるものだと知った時、思わず「ウォ~!」と叫んでしまいましたよ。

心の中でね。