作曲家:呉田軽穂(松任谷由実)の凄さを初めて実感したのは、僕の場合意外にも「Rock'n Rouge」だった。
もっと早く「小麦色のマーメイド」とか「瞳はダイアモンド」で気づけよ、って感じだが、ぼんやりしてたのかもしれない。
「Rock'n Rouge」の場合も危うくぼんやり聴き流すところだったが、Cのキーで始まってBメロでE♭に転調し、Bメロ最後の“目を伏せたー”の“たー”の音をド(コードもC)で終わらせることによって元のキーにスムーズに再転調してたことに気がついた時、思わず膝を叩きましたね。
まだ当時10代だった僕は、“ユーミンて天才じゃね?”と、完全に上から目線で思ったものでした。一体何様のつもりだったのでしょうか。
僕はこの転調のやり方をパクって何曲も作りましたが、岡村靖幸さんも「Rock'n Rouge」に影響受けた公言されてますね。彼のどの作品にその影響が表れているのか分析してみたいところですが、気が遠くなる話なので、そのへんは岡村さんのマニアの方にお任せします。
「Rock'n Rouge」に影響された作品といえばやはりこれでしょう。
某アニメのエンディングテーマなんだけど、深夜のテレビからこれが流れてきた時は大爆笑でしたね。でもこれをパクリとか言って叩いてはいけません。もはやこの曲の作曲者が他人とは思えない。と思って調べてみたら、作曲者は「Rock'n Rouge」発売の翌年に生まれた方でした。
「Rock'n Rouge」という曲はサビこそ4度進行を基本に進んで行きますが、ベースを固定した分数コードで進むAメロや、サビ前の“ちょっとブルーに”のところのdimの使い方とか、すごい勉強になった。
なので作曲を志してる人が“このコード進行使ってみたい!”という衝動に駆られるのはよくわかる。だからといってそのまんまやっちゃうのは勇気あるなぁ。
その前に、誰か止めなかったのだろうか。
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そんな「Rock'n Rouge」ですが、この曲では「天国のキッス」以来の購入者プレゼント企画が行われた。今思えばなぜこのタイミングで?と疑問が残る。
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「Rock'n Rouge」はCBSソニー香港の10周年企画アルバムにも収録された。
写真は『Seiko-Train』の流用ですね。
A面の3曲目が「Rock'n Rouge」。なんと4分15秒バージョン。つまりフェードアウトが1秒長い、とは言ってもこれはよくある誤差の範囲内。
この香港盤は90年代の初頭に、今は亡き「ハンター」渋谷店で偶然発掘したもの。
「ハンター」といえば、都立大学店の入口ドアに『SQUALL』の予約特典ポスターが貼ってあったのを思い出しますね。入口が目黒通りに面してたから日に当たって変色してましたが。
あのポスター大好きなんだけど、画像検索しても見つかりませんね。
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1984年は春から武道館コンサート「FANTASTIC FLY」開催。
この時は生まれて初めてチケットを買う為に徹夜して並んだ。82年と83年の武道館は1階スタンドだったので、どうしてもアリーナ席のチケットを手に入れたかったのだ。発売された時期は真冬だったから、マジできつかったですね。今までの人生であんな寒い思いをしたのは、あの時だけかも。
そんな苦労もあって2days両方ともアリーナ確保。
チケットケースには「FANTASTIC FLY」の文字があるのに、なぜかチケット本体にはその文字がない。
チケットを購入する段階になって初めて、このコンサートが円形ステージで行われる、ということを知る。
しかし頭には「アリーナ」しかなかった為、二日間ともアリーナ席を購入してしまった。これが大きな間違いだった。
コンサート当日、入場してみて愕然とした。アリーナ席に座ると、ステージ前方しか見えないのである。
円形だから当然ステージを360度使うわけだけど、自分の位置から見て手前に聖子さんが来た時だけは超目の前だけど、それ以外の時は何も見えない。音を聴いてるだけ。ステージ上の演出も何も見えない。
天井から吊るされたスピーカーはスタンド席に向けてセッティングされていたので、アリーナ席の客はこもった反射音しか耳に入ってこない。視覚的にも聴覚的にもアリーナ席は完全に蔑ろにされた状態だった。
さらに視覚的効果を優先するために“口パク”の導入、“踊れるバンド”への交代など、「Seikoland」以降、伊集院静氏が演出を担当するようになってから、ろくなことがなかった。どこまでが彼の意向なのかは知らないけど。
後日テレビ放送されたのを見て、ステージのフロア全体で構成されたライティングだったことを初めて知った。
この時の教訓を活かして、武道館コンサートが円形ステージだった場合、アリーナは1日だけにして他の日はスタンド席で観る、ということを心に誓ったのでした。
この「FANTASTIC FLY」以降、聖子さんの武道館コンサートは暫く円形ステージが続いたが、同じ過ちを繰り返すことはなかった。
1984.4.24 日本武道館 TOTAL TIME 1時間54分
セットリスト ※印はテレビ未放送(テレビ収録は4月24日)
00:Overture(小麦色のマーメイド) ※
01:ガラスの林檎
02:マイアミ午前5時
03:Private School ※
04:秘密の花園
MC1
05:裸足の季節
06:風は秋色
07:白いパラソル
08:SQUALL
09:夏の扉
10:蒼いフォトグラフ(前奏部でバンドメンバー紹介) ※
MC2
11:SWEET MEMORIES
12:瞳はダイアモンド
MC3
13:ピーチシャーベット
poetry reading(BGM:Sleeping Beauty) ※
14:渚のバルコニー
15:Canary
16:制服 ※
17:赤いスイートピー
MC4
18:LET'S BOYHUNT
19:天国のキッス
20:Rock'n Rouge
アンコール
22:青い珊瑚礁
23:Only My Love
「蒼いフォトグラフ」は曲の前半、「制服」では曲の後半にインストパートを追加して、そこで衣装替えをしていた。その為に曲が長くなったから、テレビ放送ではカットされたと思われます。独身時代の「制服」のライブ映像は貴重だから、残しておいてほしかったですね。
「Rock'n Rouge」はテレビ放送では曲の最後に両手を挙げて頭を下げたところで終わっているが、実際はあの後にもう一度「Rock'n Rouge」のイントロが始まり、客に挨拶してから引っ込みアンコールへと続く流れだった。あと当然ながらテレビではMCがほとんどカットされてましたね。
poetry readingのBGMとして使用された「Sleeping Beauty」は、この時点ではまだ未発表曲。これはこのコンサートの音楽監督が大村雅朗さんだったからこその演出でしょう。