- 向日葵(5:27)
作詞:野村義男、作曲:曾我泰久 - 始まったばかりのストーリー(4:29)
作詞:田口俊、作曲:曾我泰久 - ハダカノココロ(4:12)
作詞、作曲:曾我泰久 - 優しく強く(5:22)
作詞:野村義男、作曲:曾我泰久 - 永遠の君へ(4:58)
作詞:大久保孝之、作曲:曾我泰久 - 遠い夏(4:31)
作詞、作曲:曾我泰久 - Stand Alone(4:38)
作詞、作曲:曾我泰久 - 君の歌(4:38)
作詞:野村義男、作曲:曾我泰久
Produced by Yasuhisa Soga、Arranged by Atsushi Onozawa
2010年10月10日発売 DOC-584/YS-006
以前から、“発表済みの曲をレコーディングし直してベスト盤を作りたい”というような発言はありつつもなかなか実現せず延び延びになっていたが、ちょうどソロデビュー20周年という節目の年に、念願だった企画が実現した。
“出来上がった曲をいち早くファンに届けたい”という思いの元にスタートした『Super Rare Trax』シリーズはvol.8を数え、同趣向の『music Life』シリーズの3枚を併せれば、実に11枚もの所謂“宅録もの”をリリースしてきた。当初は“デモ音源”的な意味合いも含んでいたこれらの作品は、機材や打ち込みのノウハウの向上に伴い完成度も高くなり、もはや“デモ音源”とは呼べないレベルに達していた。しかし今回の『君の歌』を聴いてみて、これまでの長い長い試行錯誤の繰り返しは、この作品を生み出す為の過程でしかなかったのかも?、という思いがする。
再レコーディングに挑むにあたり選んだリズム隊は、楽器を始めた当初からの盟友でもある、松原秀樹、長谷部徹の両氏。キーボード及びアレンジには、グッバイ時代、文字通り寝食を共にした小野澤篤氏。この面子を見ただけでも、今回の作品に懸ける意気込みが伺える。
出来上がった音は、当然ながら打ち込みには出せない“血の通った音”で、一つ一つの音の重みがまるで違う。4リズムを基調としたシンプルな編成でありながら、隙の無い見事な編曲&演奏、百戦錬磨のミュージシャンが本気を出した時に生み出すグルーブがぶつかり合った瞬間に生み出すマジック、これこそ音楽の醍醐味だ。
正直なところ作品数は多いわりに、“これが曾我泰久の代表作です!”という1枚がなかったので、ファンにとっても自慢できる嬉しい作品に仕上がった。流通面でも一般の店舗で購入できるようになるそうなので、今までになかった新たなメジャー展開が期待できそうだ。
ソロデビュー20周年にして、ある意味今“もうひとつのスタート地点”に立ったのかもしれない。
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- 向日葵
イントロのスネアを聴いた瞬間から名盤を予感させるオープニング曲。このスネアのゴーストノートには、打ち込みでは出せない円熟の味が詰ってますね。サビの繰り返し前のパートに新たなアレンジが加わってる点と、フェイドアウトで終わらないのが、オリジナルバージョンとの違い。「SRT vol.4」収録。
- 始まったばかりのストーリー
長らくライブバージョンしか存在していなかった曲だが、ついに待望のスタジオレコーディングバージョンの登場だ。イントロのメロディがよりドラマチックになり、サビに分厚いコーラスが加わったことにより、かなり印象が変った。「SRT vol.3」収録。
- ハダカノココロ
“子供じゃだせない8ビート”とはよく言ったもので、こういったシンプルなリズムの曲にこそ、演奏者の経験が表れる。コーラスのミックスがより前面に出て分厚くなった印象。間奏にサックスソロが加わっていて、オリジナルバージョンを聴き慣れた耳には意表を突かれた。曲が終わった後のシンバルの余韻に胸が高まる。「SRT vol.5」収録。
- 優しく強く
アレンジ的には「SRT vol.4」に収録されていたバージョンとほぼ同じ印象を受けるが、生のピアノとストリングスの効果は絶大で、より深みのある音像に仕上がっている。こちらのバージョンでは、1コーラス目の終わりからリズム隊が演奏に加わる。
- 永遠の君へ
「music Life 42 1/3 RPM」に収録されていたバージョンよりも、さらにストリングスの比重が増した印象。イントロのメロディーや間奏のコード進行は、まるで映像が目に浮かぶようなドラマ性のある展開で、小野澤さんの本領発揮といったところ。
- 遠い夏
現在入手困難になってしまった初期作品「Soga」に収録されていた曲、ということもあり、再レコーディングを喜んでいるファンは多いことだろう。「優しく強く」同様、アレンジ的にはオリジナルバージョンとほぼ同じ印象を受けるが、間奏の展開やストリングスのアレンジが素晴らしく、息を飲んでしまう。
- Stand Alone
これも「Soga」に収録されていた曲だが、今回の再レコーディングで、「Soga」収録曲10曲中5曲が再レコーディングされたことになる。以前この曲について“やっちん版「Born To Run」”という表現をしたが、新たに加わった間奏のサックスソロを聴くと、よりその思いが強くなる。秀樹さんのベースの安定度がずば抜けて素晴らしい。
- 君の歌
最も新しい曲なだけに、オリジナルバージョンに一番近い印象。間奏部分でベースがハイポジションでフレーズを弾いてるが、こういった地味で目立たないけど効果的なプレイを聴くと、このメンバーでレコーディングしたことの重要性を、改めて考えさせられる。アルバムのタイトルチューンでありラストを飾る曲として、実に相応しい名演だ。「SRT vol.8」収録。
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以下は一般の方へ向けた簡単な紹介記事です。僕がネット上に発表してる文章は全て著作権フリーなので、ご自由に転載・引用してもらって構いません。むしろ宣伝のためにじゃんじゃん転載して欲しいくらい。ただし、内容の改ざんだけはやめてね。
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曾我泰久「君の歌」
2010年10月10日発売 DOC-584
約7年間に渡るThe Good-Byeとしての活動に一段落をつけ、長年親しんだジャニーズ事務所から独立して20年。
これまでにも数多くの作品を発表してきたが、それらの多くは打ち込みを主体とする“一人多重録音”という手法によって製作されたもので、出来上がった音をそのままの状態でファンに届けたい、という思いの元、インディーズという形でリリースされてきた。それらの作品は、いつかきちんとミュージシャンの手によって演奏された音でのリリースを前提とした、言わば“デモ音源”的な意味合いも含んでいたが、この度ようやく、その当初の目的である“ミュージシャンの手によって演奏された音”でレコーディングし直された、20年間の集大成とも言える作品が完成した。
ジャニーズ事務所出身ということで、ミュージシャンとしては偏見的な目で見られがちだが、当初はそういった見方をしてた人が彼の作品に触れて目から鱗が落ちた、という話を聞いたのは一度や二度ではなく、音楽業界人やプロミュージシャンの中にも彼のファンは多い。作品の傾向としては、ビートルズやビーチ・ボーイズ直系のポップフレイバー溢れるもので、ジェフ・リン、トッド・ラングレン、杉真理らの音が好きな人の耳には、すんなりと溶け込むことだろう。
再びメジャーフィールドに立った“ポップマエストロ”。この音を聴き逃す手は無い。
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