松浦亜弥 ドッキドキ!LOVEメール


作詞、作曲、プロデュース:つんく
編曲:高橋論一

彼女がデビューするきっかけとなったオーディションをまったくチェックしていなかったボクは、その存在すら知らないまま、ある日突然彼女と出会うことになる。それは、この曲のテレビスポットCMでした。そのルックスもさることながら、あの印象的なサビ一発で、ボクは完全にノックアウトをくらってしまいました。そこで、自分なりに曲の成り立ち方を整理しながら、この曲の魅力について考えてみることにします。

まず、曲の構成だけど、イントロ、AA'BCC'、A'BCC'、間奏、CC'、コーダという、実にオーソドックスなパターン。アレンジも、1コーラス目、2コーラス目共、ほぼ同じ編成。それでも最後まで飽きさせないで聴かせてしまう工夫が、随所に施されてます。そのポイントは、プログラミングされた音と、手弾きによる音とのブレンド加減では?

楽器編成に関しては、ドラム、パーカッション類、ベース、シンセ(主にブラス系)は、打ち込みによる演奏で、手弾きによるパートは、ピアノ、オルガン、ギター、ストリングス、そしてブルースハープ、となってます。今時のアイドルポップスの中では、マニュアル演奏の占める割合は、多いほうだと思う。つんくって人は、モーニング娘。関係の曲でもそうだけど、手弾きによるフレーズを、有効に織り交ぜるタイプのアレンジャーが好みのようですね。ほとんどフィルインの入らないドラムは、バスドラの4つ打ちが主で、80年代後半に一時代を築いた、PWLレーベルのサウンドを彷彿とさせるものがあります。イントロ及びBメロ(♪メールじゃこの気持ち~の部分)の頭でのみ、サンプリングによるスネアの連打が挿入されてるけど、元ネタはなんでしょう?フォートップスの「I Can't Help Myself」と同じ音に聞こえるのは気のせい?。全編に渡って聞こえるワウギターは、アレンジを担当した高橋論一による演奏で、この曲の印象を決定付けるサウンドとなっています。で、このワウギターの定位なんだけど、イントロ、1コーラス目の終わり、及びコーダ部ではセンター、Bメロでは左、それ以外では右と、曲のパートによって定位を変えるという、さりげない小技をキメてくれてます。ワウが鳴りっぱなしでも邪魔に感じないのは、このせいかもしれません。ワウギターと同等に印象的なのが、“Yo!”とか“Yeah!”というコーラス。これは、つんく松浦亜弥の二人によるもの。たぶん、二人同録で2~3回重ねたんだと思う。コーダ部での“♪PaPaPa~”から、“♪Wowow~Yeah!”の部分では、さらにレコーディング現場にいた人達も巻き込んでのコーラスでしょう。これはモーニング娘。の「恋愛レボリューション21」などでもおなじみの手法で、つんくがよくとる方法です。これを聞いてると、楽しそうなダビング風景が想像できますね。ぜひとも一度レコーディングに参加してみたいもんです(ムリだって)。間奏で唐突に現れるブルースハープが、打ち込み系のリズム隊に乗っかってきてもほとんど違和感がないのは、ピアノやストリングスといった生楽器が、うまい具合に中和作用の役目も果しているからでしょう。随所に効果的に散りばめられたストリングスの効果は絶大で、特にサビの最後の部分での3連下降フレーズで、ボクはいつもイッてしまいます。

つんくは自他共に認める“80'sアイドルポップスマニア”で、その傾倒ぶりは、彼が手掛けた諸作品で確認できると思います。特に、山瀬まみの初期作品がフェイバリットとのことで、「メロンのためいき」(作曲:呉田軽穂、編曲:松任谷正隆)や、「セシリア・Bの片思い」(作曲:宮城伸一郎、編曲:船山基紀)などのエッセンスは、この「ドッキドキ!LOVEメール」にもうまく活かされているのではないでしょうか?

と、まあ、ダラダラと書いてきたけど、結局のところ、この曲の一番の聴きどころは、彼女のボーカルに尽きるんだよね。でも、もしもこの曲を聴く機会があったならば、ここに書いてあることを少し思い出して、“あぁ、ナルホドね”と、一瞬でも思ってくれたら幸いです。

カップリング曲の「待ち合わせ」のようなミディアムテンポの曲でも、そつなくこなす彼女。もっともっといろんなタイプの曲を、あのボーカルで聴いてみたい、そう思わせてくれる。素敵な可能性を間違い無く持っている、松浦亜弥って子を見出した、“創造できるあいどるおたく”つんく氏に、心から敬意を表します&めちゃくちゃジェラシー。

※このテキストには、多分に推測や妄想、勘違いが含まれている可能性があります。“それは違うだろ!”という方、遠慮なくご指導ください。よろしくです。