ON & OFFのツアーを終えて

ON & OFF(曾我泰久野村義男)の東名阪福ツアーが無事に終了した。

全公演追っかけてるとセットリストや構成も頭に入ってるから、終演間際に“あぁ、そろそろ終わりだな”というのがわかって、最終日なんかはそれまでの日々が頭を過ぎって、若干感傷的な気分になることがある。ブライアン・ウィルソンの来日公演は毎回全公演行ってるけど、いつも最終日の最後の曲で涙腺が緩んでしまう。今回のON & OFFでも、福岡で「Good Lovin'」を聴いた後、“このまま時間が止まってくれ!”と本気で思った。

が、しかし。最後の最後に超サプライズがあって。感傷的になるどころかボルテージ上がりまくりで。終わった後も冷静な気分でいられなくてさ。こんなエンディング経験したことないよ!。なんてやつらだよグッバイって。愛してます。

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初日の渋谷duoという会場は、今回のツアーで一番大きい箱だったにも関わらずチケット争奪戦は熾烈を極めた。演る側も観る側も初めてだから、果たしてどうなることやら?状態だったけど、演奏的には4公演中でもかなり良い出来だったと思う。

名古屋ボトムライン公演では、名古屋にまつわるエピソードが多数紹介されたが、そのうちのひとつは翌日の大阪で早速訂正してましたね(「VOICE」の件)。あと「TAKE MY HEART」のイントロは、名古屋のコメ兵で12,500円で買ったギターでレコーディングした話とか。ちなみにそのギターは、当時のサポートキーボーディスト(たぶん小野沢篤氏)にプレゼントしてしまったとか。

大阪 am HALLでは、お客さんの一人が体調を崩して中断してしまう、というアクシデントがあったが、まわりのお客さんやスタッフが迅速かつ適切な対応をしたため大事には至らなかったようです。客席から“私、看護婦やってます”と名乗りでた二人の女性の対応が素晴らしかったし、ライブが中断したことに文句を言う人が一人もいなかったのが、ちょっと胸を打たれた。さすがグッバイファン。しかし、こんな時に何もできない自分が不甲斐無くもありました。

福岡のROOMSという会場は今回最も小さいところで、その名のとおり“部屋”って感じ。ちょっと広めのリビングルームといったところか。ステージと客席の距離も手が届きそうだったし。僕は3列目で観てたんだけど、もう目が合いまくりで照れ臭いのなんの。こんな狭いところでザ・グッバイ揃い踏みですからね。興奮するなっていうほうが無理ってもんです。

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では、簡単に曲毎の感想。

  • Non-No Baby
    ステージに二人が登場して、肩慣らし的な即興ジャム後に力強いカッティングでスタート。最初にこの曲がオープニングとして演奏されたのを聴いた時は正直驚いたが、歌詞を考えてみれば“なるほどね”という感じ。
  • 涙のティーンエイジ・ブルース
    シャッフルのリズムを刻みながら、簡単な挨拶を交えてからスタート。通常は二人のツインリードギターがフィーチャーされるが、今回はやっちんがバッキングに専念してよっちゃんが主メロを弾く、というスタイル。エンディングの最後から二小節目のみやっちんがハーモーニーパートを加えてましたね。“♪だってYou,You and Me〜”のところでやっちんがファルセットでコーラスをつけるのだが、大阪ではかなり辛そうだった。翌日の福岡では無事に復活してて一安心。
  • とLOVEるジェネレーション
    よっちゃんが19歳の時に一人暮らしを始めた時のことをモチーフに作詞した、というエピソードが演奏前に紹介された。“♪部屋はそのままにポスターはがして”のポスターとは、よっちゃんの部屋の洋服ダンスの扉を開けた内側に貼ってあった、桜田淳子のポスターのことらしい(確か名古屋で話してた)。
  • なのにDoだろう
    これはかなり意外な選曲。作詞は勿論、作曲もよっちゃんの曲なので、かなり野村義男色が強いパフォーマンスとなった。やっちんはテーマリフ(たぶん元ネタは「The Peter Gunn Theme」)をメインに、コーラス(♪何も言わず〜のバックでFu,Fu〜)を担当。
  • マージービートで抱きしめたい
    当初よっちゃんはこの曲が大嫌いで曲に詞を付けることを拒み続けたが、当時のディレクター(相茶紀緒氏)にビーフシチューを御馳走になり、あっさり快諾。そのお店は渋谷公会堂(現:CCレモンホール)の前あたりにあったらしいが、既に閉店済み。残念。名曲誕生所縁の地として巡礼したかった。よっちゃんは、ビートルズというよりジョン・レノンのイメージで作詞したとか。
  • どれ位・・・
    今回、やっちんソロ曲から野村&曾我コンビの曲が二曲披露された。僕の事前予想では「Holy Night」と「向日葵」だと睨んでたんだが、意外でしたね。でもこの曲には個人的な思い入れが強いので、演奏されて素直に嬉しかった。最後の福岡では、ちょっとヤバかったです(僕の涙腺がね)。よっちゃんによれば、この曲はやっちんそのものなんだとか。
  • ほんの少し汚れた空の下で
    これもやっちんソロ曲からだが、こっちはよっちゃんの家の周辺での風景を描いた内容らしい。よっちゃんのリードギターによるイントロで、この曲を生で聴ける日が来たことに感謝。
  • 〜15才〜
    今回のツアーで初披露された新曲。作詞の依頼をしたのは今年の2月だけど、最近できたばかりらしい。二人曰く“究極のラブソング”。イントロのジョージ・ハリスン風ギターが印象的だが、あれは二人がそれぞれ複音で、よっちゃんが下降フレーズ、やっちんが上昇フレーズを弾いてたようです。それを同時に弾くとあのようなハーモニーになる、と。恐らくスタジオ録音される際には、あの部分はスライドギターになるんじゃないかと予想。これマジで名曲なので、メジャーレーベルからリリースして、多くの人の耳に届けるべき曲だと思う。
  • Faraway
    ON & OFFとしては、ほとんどの曲のギターソロはよっちゃんが弾いていたのだが、この曲に関してはレコード同様やっちんがソロを弾いていた。このテの曲はアコースティックアレンジが冴えますね。
  • VOICE
    名古屋公演では“名古屋のホテルで作った”と言っていたが、終演後ファンから“昔、大阪で作ったって言ってました”と指摘され、翌日の大阪公演ではあっさり前言撤回。福岡公演では、“モデルになったヤンキーを探してます”とか言ってましたね。冗談だろうけど。アコギで弾くと、より一層「Do You Want to Know a Secret」へのオマージュ度が増して聴こえましたね。そうか!、ON & OFFの裏テーマはジョージ・ハリスンだ!。これに気付くのに4日かかった。
  • のぞいてFeel Me, Touch Me
    グッバイの「再会」や「Ready Go!」ライブでもアコースティックセットで演奏されてたが、わりとその時の印象に近いかも。次回のグッバイライブでは、逆にエレクトリックセットでの演奏を聴いてみたいかも。昔みたいに、やっちんがエレピ弾きながら歌うスタイルで。大阪、福岡では、例の“やっちん免許不携帯で罰金事件@観音崎”のエピソードも紹介されてましたね。
  • 浪漫幻夢(Romantic Game)
    僕がグッバイの曲の中で3本の指に入るくらい好きな曲なんだが、まさかこの曲が演奏されるとは思わなかった。それくらい、アコースティックアレンジが想像できなかった曲。確か大阪では失敗してやり直さなかったっけ?福岡で2コーラス目の“♪Romantic Gameの〜”の“の〜”の部分をフェイクして歌ってたのは、のどがイガイガしてて高い声が出なかったからに違いない(推測)。福岡のみ、この曲の製作エピソードを紹介してました。
  • Hong Kong Blues
    曲が始まる前に即興のブルースセッションがあったのだが、日によってはやっちんがソロを弾かないでバッキングに徹してる日がありましたね。大阪での演奏が凄いかっこ良かった印象がある。Hong Kong Bluesはよっちゃんのボーカルが圧巻で、スタジオ録音を遥かに凌ぐ迫力があった。本編はこの曲で終了。
  • Good Lovin'(東京・福岡のみ)
    東京公演の時に、“初めて人前で演奏する曲”と言ってましたね。スタジオ録音ではピアノによるイントロの上昇フレーズを、ギターのユニゾンで再現してたのが、とても印象深い。東京公演以降、もう聴けないのかも?と思っていたら福岡のアンコールでいきなり演奏されたので、かなり驚いた。
  • DOLL(名古屋のみ)
    名古屋公演のセットリストの本編が前回の東京公演と同様(「KANNJIで書けない」を除く)だったので、いきなりこれが始まった時には妙に(僕の)テンションが上がった。名古屋だけなのが勿体無いくらい、勢いのある演奏でしたね。
  • にくめないのがニクイのサ(大阪のみ)
    名古屋でもこれと「異人さんにはわからない」を、MC中にちょこっとよっちゃんが一人で演奏してたけど、二人でちゃんと演奏したのは大阪だけ。通常は間奏で二人がソロを掛け合うところを、今回はよっちゃんが一人でソロを弾いてました。
  • KANNJIで書けない(東京・名古屋のみ)
    東京公演では、やっちんが追加公演のスケジュールを確認する為にステージ脇へさがり、よっちゃんがステージ上一人になり急遽演奏、名古屋ではアンコール後に再度挨拶に出てきた際、話が長くなって、何か演奏しないと引っ込みがつかない状態となり急遽演奏、って感じだった。ホントはちゃんと練習してたんじゃないの?って気がするが。
  • GOOD,NIGHT(Hark,the Angels'come)(名古屋のみ)
    上記の状態でよっちゃんが「KANNJIで書けない」を演奏した後、“じゃあ、次はやっちんが一人で演奏できる曲”として紹介された。この「GOOD,NIGHT」は絶品でしたよ。やっちんも練習してたな?
  • 愛 See Tight(福岡のみ)
    アンコール1曲目の「Good Lovin'」の後、“スペシャルゲストを紹介します”みたいなMCをやっちんが喋ってたら、“なげーんだよ!”とブツブツ言いながら、衛藤さんがカホン担いで登場。場内大歓声。カホンはこの日の為に購入したとか。そんなことを衛藤さんがボヤいている中、そーっと加賀さんが登場。この二人の登場の仕方が、いかにも二人のキャラクターをよく表してた。The Good-Bye勢揃い。夢のような光景だった。そして最初に演奏されたのが、この「愛 See Tight」。勿論ボーカルは衛藤浩一!“あ〜いい歌だった!”。
  • No Longer On The Earth(安らぎを求めて)(福岡のみ)
    「愛 See Tight」の後、よっちゃんがギターからマンドリンに持ち替えた。なんかまだまだ演奏が続きそうな雰囲気。ボーカルは加賀八郎!。
  • TAKE OFF
    福岡以外は勿論、曾我&野村の二人による演奏。福岡ではそこに加賀&衛藤の二人が加わって、正真正銘The Good-Byeの4人だけによる演奏。サポートメンバーが加わらずに4人だけの純正グッバイサウンド。これがホントに良かったんですよ。ただ4人が揃ったから良かった、っていうんじゃなくて、紛れも無いグッバイの音だったから興奮してるんだな、いまだに。あれ絶対、きっちりリハーサルやってるハズ。演奏完璧だったし。こう言っちゃ失礼だが、加賀&衛藤両氏のボーカルも、いつもより全然上手かったし。4人の声が重なった時のあの感じとかさぁ。思い出すだけでもゾクゾクする。

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The Good-Byeとしてではなく、ON & OFFというアコースティックユニットで二人が伝えたかったこと、あるいは確認したかったことは何なのか?このことをずっと考えてた。

それはサウンドプロダクションを意識せず、楽曲本来が持ってる曲の力を確認したかったんじゃないかと思う。「浪漫幻夢(Romantic Game)」のような曲をセットリストに加えたのが、その最たる例だろう。

そういった経験を踏まえて、いよいよ来年動き出すThe Good-Byeに対して、期待が膨らまないわけがない。

野村義男さん曰く、“The Good-Byeは後期が始まったばかり”。

まだまだ続くよ、ザ・グッバイ。